【切ない恋愛話】涙腺崩壊…!とにかく泣ける恋愛エピソード集

【切ない恋愛話】涙腺崩壊…!とにかく泣ける恋愛エピソード集


切なくて泣ける恋愛話④伝えられなかった大切な言葉

結婚して10年。若くして結婚した私たちは小さな雑貨店を営み、収入は少ないながらも夫婦力を合わせてやってきました。妻は結婚した時にはまだ18歳で、妊娠したから結婚したというわけではなく、ふたりとも親から早く独立したかったのです。

半ば勘当同然で一緒になったので、金銭的にも支援を求められませんでしたが、やっと自由になれた喜びは大きく、時には恋人同士のような恋愛を、時にはどちらかが親のように間違いを叱り合って生活していました。

妻は普段とても無口ですが、いざという時には私より大きな声で私を叱咤激励してくれるタイプで、私は妻が何も言わなければ大丈夫だと甘え、気ままに雑貨店のことだけを考えていたのです。

家計が苦しかったことはあとで知り、こんな生活がずっと続くと疑いもしていませんでした。ところがこの生活は当たり前ではなかったのです。

何も言わずにただひたすらに…


妻は雑貨店には普段はいません。別の仕事をしていて、そこから帰宅してから閉店までの時間に手伝ってくれ、閉店してから自宅に戻り、夕飯の支度をしていました。夜も私は雑貨店内で作業することが多かったので、妻は先に就寝することも多かったんです。

正確には先に寝ているものだと信じて疑わずにいました。でも違いました。妻は寝る間も惜しんで内職をしていたのです。寝室は一緒でしたがそれぞれの部屋を持っていたので、妻が自室で内職をしていたことなど全く知る由もありませんでした。

そんなある日、妻が少し体調が優れないから病院に行くと言ってきましたが、私には店を休ませるわけにはいかないからひとりで行くと病院へと出かけました。

日頃から雑貨店を何より大事にしている私への気遣いに感謝の言葉ひとつも伝えず、よく聞く話ですが「何も言わなくても分かっているだろう」と例外なく私も思っていたのです。

それは突然襲って来た


妻が病院に向かってしばらくして、店に電話が入りました。電話は警察からで、妻が乗ったバスが事故に巻き込まれ乗客が多数怪我をしていると言うのです。そして妻は「意識不明の重体」だという言葉に、私は何を言っているのかしばらく理解出来ずにいました。

恐らく何度か同じことを話してくれたのでしょう。「ご主人、聞いてますか?」と言われ、ようやく事の重大さを理解したのを覚えています。すぐに病院へと向かいましたがどうやって病院にたどり着いたのかも覚えていません。

妻のいる病院に到着した私を警察の人が待っていて、事故の状況などを詳しく話してくれていたと思うのですが、妻に逢えていない私はその話をまともに聞ける精神状態ではありませんでした。

なぜなら目の前には事故の被害者たちや家族が居て騒然としていたからです。

衝撃の事実を知ることに


治療をしてもらっている人の中に妻を見つけることが出来ず、妻を探す方が大切だと思ってしまいました。警察もそのことを察してくれたようで、話を一旦やめてくれて妻が治療してもらっている所に案内してくれましたが、処置中とのことですぐには逢えませんでした。

「こんな時に申し訳ありませんが、大切な話ですのでよく聞いてください。」そして警察はこう続けました。

「……奥様のお腹には赤ちゃんがおられました。このことはご存知でしたか…?」警察にそう言われ、愕然としました。

思い返せば数ヶ月前から私に何かを伝えたそうにしていた妻に、私は後にしてくれと話を聞こうとしていませんでした。きっとあの時、伝えるつもりだった新しい命の誕生を伝えられずどんなに不安だったか、どんなに切なかったか、どんなに私に腹を立てていたか…。

切なさが押し寄せる、誰か時を戻してくれ…


もし時が戻ってくれたら、どんなに忙しくても妻からの大切な報告を聞く時間を作るのに、と私は自責の念にかられました。恋人だった頃からいつだって妻は寡黙で、でも大切な時には言うべきことを言ってくれると人で…、今回の話を言えなかったのは恐らく経済的なことを考えてのことだったに違いありません。

後で知ったのですが、妻は子供を諦めると決めて、今日病院で子供とお別れをするつもりだったそうです。

そういえば少し前に妻が「ちょっとここに名前書いて」と、差し出してきた書類を私は確認もせず言われるままに署名しました。

あれは手術の同意書だったのか…!と今頃気付き、思い返せば昔から私は妻によく「これ書いて」と言われれば確認せずに書いていたと思い出しました。今回も妻はそうなると分かっていて何も言わず私に同意書を書かせたのです。私に言えば堕胎に反対すると思ったのでしょう。

神様!もう一度妻と話しを、話しをさせてください!


面倒なことが嫌いな私に代わっていつも妻が動いてくれていたことに今更気が付くとは本当に情けない。誰よりも大切な、誰よりも愛していたはずなのに面倒なことは何も話せなかったのだと気付き、自分が情けなくなりました。どんな気持ちで毎日フォローしてくれていたのかを考えただけで、この身が引き裂かれそうなくらい苦しくなりました。

「結婚してからだって恋愛は出来るのよ」

妻はよくそう言って笑っていましたが、結婚して10年経った今でもその気持ちに変わりはなかったはず。変わってしまったのは私の方で、いつの間にか妻の話も聞かず、恋愛とは程遠い生活の中で、自分だけがやりたかった雑貨店のオープンを実現させ、満足した生活を送っていたのです。

今、《手術中》と書かれた扉の向こうで妻は何を想っているのでしょうか。神様お願いですからもう一度妻と話をさせてください…と、何度も何度も祈りました。

手術中の明かりが消え…


こんな状況にならなければ大切な存在に気付くことが出来ないほどのダメ人間。いや、多分気付いていたのです。文句も言わず私のわがままに付き合ってくれた妻に甘えていただけです。

《手術中》の明かりが消え、医師が妻の状態を説明してくれました。妻もお腹の子も私の元に帰ってきてはくれませんでした。私はその場に崩れ落ちました。

もう恋愛もできない。妻とバカな話も大切な話も、切ない話も楽しい話も、二度とできないのです。私は10年間何をしてきたのでしょう。妻に何かしてあげられたのでしょうか。こんなにも大切な存在だった妻は私と結婚して幸せだったのでしょうか。

私を大切に想い、いつだって私より早く起きて支度をし、家計のために仕事を掛け持ちして、自由な友達を羨ましいと愚痴ることもなく笑顔だった妻。感謝していたはずなのに…それを言葉に出さずにいたことに私は気付くのが遅すぎました。私はこの切なさを一生抱えて生きていきます。(32歳/男性/自営業)

Photo:All images by iStock

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