【切ない恋愛話】涙腺崩壊…!とにかく泣ける恋愛エピソード集

  • 切なくて泣ける恋愛話①親友と同じ人を好きに…

    大学を卒業してからの私は、終電利用の常連となっていました。友人たちは、仕事にも余裕が出てきて、週末には仲間同士で飲みに行ったり、大切な恋人と過ごしたりしているみたい。そんなSNSを恨めしそうに見ながら、電車の中でいつの間にか眠ってしまうような毎日。何の楽しみもなかった私に転機が訪れたのは、ある日の終電の中でした。

    彼女は空席が目立つ中、窓際に立って外をボーっと眺めていました。その横顔がとてもキレイで、思わず見とれてしまっていると、彼女の頬に1本の縦線が見えました。よく見ると、それは止まることなく瞳から流れてくる涙でした。

    彼女はそれを拭うこともせず、外を眺める姿勢を崩しません。普段の私なら関わらなかったであろうこの状況で、この日はなぜか声を掛けずにはいられませんでした。

    恋愛下手な私が一瞬で恋に落ちたのです。

    無遠慮な私に彼女は優しかった


    「何があったんですか?」我ながらデリカシーのかけらもない言葉だったと呆れましたが、声を掛けられた彼女は涙も吹かずに驚いた様子でこちらを向いてくれました。

    そして、「ボーっとしていました」と少し微笑みながら、涙を無造作に手で拭ったのです。その仕草がとても愛おしく感じたのを覚えています。

    初対面で無遠慮な言葉を掛けられたら、普通は何も言わずにその場から立ち去るか、文句を言うかのどちらかだろうに、彼女はそうはしませんでした。

    それどころか、「私、今恋人と別れて来たんですよ。切な~い」と涙の理由までさらりと答えてきたのです。彼女の人柄は、その一言だけで充分分かりました。

    と同時に、恋人と何があって別れを選択したのか無性に知りたくなってしまったのです。「あの、私、次の駅で降りるのですが」

    別れた理由を話してくれた彼女


    降りるからどうだというのだ。一緒に降りましょうとでも話すつもりなのか?と一瞬で自問自答した私に対して、「私も次の駅ですよ」彼女はまたしてもさらりと答えてくれました。そして次の駅に到着すると駅を出たすぐのバス停のベンチに二人で座りました。

    彼女は、「どうして別れたのか聞きたいって顔していたので」と優しい微笑みで言いました。

    私はそんな顔をしていたのかと反省しつつ、言いにくいことを彼女から切り出してくれたことをうれしく感じていました。「聞いてもいいんですか?」と私が恐る恐る尋ねると、彼女はコクリと頷きました。そして、淡々と話を始めたのですが…その内容は衝撃的でした。

    それは彼女が病気で余命宣告されたという話だったのです。淡々と話し続ける彼女を見つめたまま、黙ってその話を聞くことしか私には出来ませんでした。

    恋人の正体に動揺


    そんな私に、「でも彼はそれでも結婚したいって言ってくれたんです」と、ほんの数分前に突然声を掛けた無粋な私に話をしてくれたのです。

    「彼は来月から海外赴任が決まっていて、明日は彼の大学時代の仲間がお祝いしてくれるそうです」…この彼女の言葉にふと、先ほどまで見ていたSNSの内容が被ると思い出し、スマホを取り出して私は動揺しました。親友のSNSで、今私の横に座っている彼女との仲睦ましい2ショット写真を見つけたのです。

    私は親友の恋人を好きになるつもりなのか。それはさすがにダメだと思い、あえてその事実を彼女に伝えると彼女は動揺するどころか何かを思いついたように目をキラキラと輝かせました。

    「お願いがあります。彼に私を諦めさせる共犯になってください!」

    彼女の話はこうです。本当は他に恋人が出来たから別れることに決めたのである。その恋人はあなたの親友、自分は最低だから忘れてほしいと彼に伝えるということでした。

    こんな形で再会するとは…


    これに協力すれば、間違いなく私も親友との仲は終わってしまいます。でも、私は彼女の芝居に付き合いたい気持ちしかありませんでした。そして恋愛下手な私の初めての恋愛芝居が始まろうとしていました。

    翌日、私は不参加だと伝えていた親友の飲み会に行けると連絡しました。すると親友はとても喜んでくれましたが、再会すればそれは真逆の感情に変わることが予測できました。それでもいいと私は思っていたのです。

    そして、芝居の幕は上がり、飲み会の席で私は久々の再会を喜ぶ親友の顔を見ました。とても穏やかで、前日に彼女からフラれたことなど誰にも気付かれない顔でした。

    同い年なのにいつでも私より先を考え、人のことを考えられる親友です。彼の秘密に気付いているのは私だけということを、親友は想像もしていなかったでしょう。そして飲み会は2時間ほどで終了しました。

    親友の顔は穏やかだった


    あとは時間がある仲間だけで別の店に行くらしく、店から出る時に私は親友に声を掛けました。「ちょっと報告があるんだけど…」。親友は何も知らず嬉しそうに「おっ!もしかして彼女とか出来たか?」と。

    こんなにも親友の言葉に切なさを感じたことはありません。私は親友を騙す覚悟を決め、親友を連れて彼女の待つ場所まで行きました。彼女を見た親友は何かを察した様子でした。

    「ごめん。お前の彼女だったんだってな。俺、知らなくて…」ぎこちなく私が言うと、親友は彼女を見た後私を見て、「……余命宣告の話は?」と、か弱い声で聞いてきました。

    「嘘なの…!」彼女は私が言うはずの言葉を代わりに言ったのです。それを聞いた親友の顔はとても切なく見え、私も何か話をしなくては…と思いながらも頭の中が真っ白で何も浮かびませんでした。

    私の様子を見た親友は、「そっか…。良かったよ。死なないんだろ?安心した。最初からそう話してくれたら良かったのに…」

    こんな切ない恋愛なら恋愛なんてしたくない


    笑いながらそう言いましたが、明らかにその目は笑っていませんでした。信じてくれたのか?こんな話を?私は胸が締め付けられるのを感じていました。

    私は親友とそこで別れ、彼女と一緒に居ました。親友は私たちの話を何も疑わず受け入れてくれたようにその場から去って行きましたが、恐らく彼女の嘘に気付いていたでしょう。

    翌月、親友は予定通り海外へと出発しました。あれ以来彼女には連絡していないそうです。私は、あの場限りの恋愛芝居の相手だったはずが、付き合いは続いていました。恋愛という感情が彼女にないことは分かっていましたが、天命を全うするまで親友に代わって見守ろうと決めたからです。

    でも私の方はあれからずっと彼女の事が好きで、だからこそ親友が何も言わず彼女と別れた優しさに敗北感すら覚えていました。

    ですがその親友が出発して数週間後……、彼女は宣告通り天国へと旅立ちました。私は最後まで彼女のそばにいられたことを誇りに思います。(27歳/男性/営業職)